2008年12月27日

全国行脚 ~ 日本弁護士政治連盟幹事長として

2007年6月より日本弁護士政治連盟の幹事長に就任し、本林徹理事長とともに全国の支部活動の前進のための行脚を続けている。
 本林理事長は、2002年4月から~2004年3月まで日本弁護士連合会の会長を務められた方で、そのうちの1年は私の日弁連事務次長時代と重なっており、近いところでご一緒に仕事をさせていただくのは二度目である。

 さて、弁護士政治連盟の幹事長としての全国行脚の中心は全国8ブロックの地方弁護士連合会の大会である。毎年7月に始まる東北弁連大会を皮切りに、北海道弁連大会、9月に関東弁連大会、10月に中国、中部、九州、11月に四国、近畿で終了する。2年間で、二巡を終えた。多くは大会が金曜日、前夜懇親会が設定されているときは木曜日の夜から現地にはいるので二泊のことも多い。

 九州弁連の開催地大分での「ふぐ」をはじめ、おいしい料理や地元弁護士会の暖かいおもてなしに心洗われる場合も多い。 

 この弁連大会のほかに、支部設立総会の出席、10周年等の記念行事等もご招待があれば、都合のつく限り出席して、支部の方々との懇談を繰り返してきた。
 支部の活動は、この間飛躍的に前進してきているが、それは見えない壁を乗り越える闘いでもある。

 全国周りの中で、弁護士を取り巻く環境の変化と、新たな環境に対応すべく弁護士が自らの意識を積極的に変えていくことの大切さをどのようにして訴えていくかが私の問題意識であった。
 特に、「弁護士と政治の関わり」ということに限れば、いくつかの問題が浮き彫りになる。
 一つは、「弁護士は政治と距離を置くべきだ」という考えである。
 その背景には、いくつかの思想的要因があると思われるが、一つは伝統的な、立法、行政、司法の厳格な三権分立の理念の影響が、潜在的にあるのではないかと思われる。
 司法は裁判所の権限であるが、それにかかわる裁判官と同じように、検察官、弁護士のいずれもその司法の一翼を担っており、行政や立法分野のことには、直接はかかわるべきではなく抑制的に対応するという考え方である。そうすると、立法は国会の仕事であり、行政は内閣・省庁の仕事であり、司法の一翼を担う弁護士は積極的に関与しないという発想になる。支持政党を明確に意識し政治活動を展開する一部の弁護士を除いては、多くの弁護士が何となく政治から距離をおくという発想の根底には明確に意識されていないまでも何となくそんな背景があるのではないかとうかがわれる。

 また、政治はどろどろとした利害対立の調整など、司法の潔癖さに比較して汚れていて近づきたくないという感覚を持つ弁護士もいるかも知れない。

 しかし、この二つを乗り越えることこそ、今日、日本弁護士政治連盟に問われている最重要の課題であると考えるに至った。
 一つは、三権分立は過度の権力集中を排除するための理念であり、特定の人、特定の職種、特定の団体が、その一つの枠の中に入ったらそこから外に出ないという理論とは全く異なるからである。最近は、法律のスペシャリストである弁護士が任期付き公務員として弁護士の登録をしたまま行政官になる例も増えている。弁護士資格を有する国会議員は衆参両院をあわせ現在45名を数えるが、これは米国はもちろんお隣の韓国よりも低率である。こんな中で、法の担い手として実務に携わる弁護士が、本来の業務である個別の事件の解決の中で感じ発見した問題点についてそれを立法的に解決することを提言して行くことこそ、もう一つの弁護士の社会的使命ではなかろうか。それを肯定するなら、もっともっと、行政の分野や、国会議員に弁護士が進出すべきであるし、また弁護士が政策を立案し、あるいは立法過程に弁護士の意見を反映させる手だてをもっと講ずるべきであり、その組織こそが弁護士政治連盟ということになる。
 また、政治はどろどろしていて近づきたくないという考え方に対しては、法の支配は「司法」だけでは行いきれず、政治のあり方にこそかかっているということである。
 日本国民の将来は政治のありかたに大きく依存しており、だからこそ弁護士は、個別事件の司法判断に加えて、政治の様々な場面に関与して、必要な立法を促進し、政治の不正・腐敗をただして行く役割を果たすことも法曹の重要な使命の一つではなかろうか。本来「政治」こそ「私」を捨て、国民のために奉仕するもっとも崇高な職業であるはずである。 若い弁護士の皆さんが、そんな意識を持って少し政治家に近づいたらいい。そうすると未来への希望も湧いてくる。政治を遠くで眺めて新聞の記事だけを読んでいると政治に対する批判だけが先行するが、実際の政治家と直に接し直に立法活動について議論してみると、少なくない国会議員がまじめに立法に取り組んでおり、また勉強もしており、また我々の意見を真剣に聞こうとする姿勢を持っていることに心打たれるはずである。そう、おそれずにいえば、「政治はどろどろしていて近づきたくない」という感覚は、おそらく「食わず嫌い」のたぐいに近く、ものはためしと、実際の政治家に会う機会を持てば、その感覚は次第に解消していくことが多いのである。

 私は、弁政連の多面的な組織活動の一つとして、全国の支部から国会議員をめざす若手法曹が育つことを夢見て、2009年の1月から、また新たな決意で、山口、水戸、新潟、福島、釧路と行脚を始める。

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