2018年02月21日

赤神諒氏「大友二階崩れ」日経小説大賞受賞式

私が、18年ほど前、
日本弁護士連合会で事務次長として弁護士会館の常勤弁護士として務めていたころ、
日弁連で行政法・環境法の専門家で弁護士と言うよりは学者タイプの好青年が、
嘱託として勤務していた。

その弁護士の名は、越智敏裕。
その後も法律家として法学部で教鞭をとっており、
学者・教育者にふさわしい弁護士とばかり思い込んでいた。

そんなある日、私の手許に1通の招待状が届いた。
そこには、第9回日経小説大賞、授賞式・座談会にご出席くださいとある。

何だ、これは?

それに写真のパンフレット


そこに記載された小説家「赤神諒」。
それが彼の晴れ舞台登場のペンネームである。
いつこんな小説を書いていたのだろう。
本業があるのにどこで時間を作っていたのだろう。
それも法廷ものを書く弁護士・小説家はいる。
しかしこれは本格的時代小説である!!

「大友二階崩れ」がそのタイトル。
しかし応募にあたって、彼が最初に付けたタイトルは「義と愛と」。
これでは私の大好きな「越後の上杉・直江」である。

日経の売り出しにあたってタイトルは、「大友二階崩れ」に変更された。
戦国時代、九州の大名、大友家のクーデターが二階で勃発したことに因む。

この日は、御案内のパンフの通り、座談会が、
赤神諒に加えて、選考委員の辻原登、高樹のぶ子、伊集院静という面々。

赤神諒の受賞にあたっての話がまた楽しい。
授賞式前日も夜遅くまで飲んで販促に励んでいた話、
題材は大小説家が書いていない戦国時代の人物を
北から順にたどっていたら九州まで行ってしまったという話など、
聴衆を飽きさせない。

さて、今まで、私の知人で著書を上梓された方は皆さん、その作品をご恵送くださった。
今回は、授賞式・座談会のご招待状だけであった。
しかし、当日の赤神さんや選考委員の方々の話を伺っているうちに
是非とも読みたいという気持ちになり、
さらには何人かの知り合いにも読んでほしいという気持ちになり、
会場で5冊ほど買い求めた。

赤神さんの販促戦略にうまく乗せられたのである。

さて、そして、授賞式終了後、日経ホールで、私の妻と三人で一緒に記念撮影。

購入後翌日から、二日くらいで、読んでしまった。
面白い。
読後の感想は、「これは宝塚の舞台でいける」いつか必ず。

さて、「大友二階崩れ」のストーリー。
主人公は大友家の重臣の吉弘家の兄弟、
兄の吉弘左近鑑理(あきただ)と弟の吉弘右近鑑広(あきひろ)。
主君義鑑(よしあき)は、自らの愛妾の幼子を嫡子にしようと、
正妻の嫡子義鎮(よししげ)(後のキリシタン大名大友宗麟)の廃嫡を試みる。
しかし、この試みは失敗に帰し、逆に大友館の二階で殺害され、嫡子義鎮のクーデターが成功する。
しかるに、義に生きる兄鑑理は義鑑死亡後もその忠義は変わらぬまま。
新当主の大友義鎮派の重臣の中で自らの地位の不安定を招き、吉弘家の将来を危うくしていく。

一方、弟鑑広は、城攻めで助けた敵方の武将の姫を助け、その愛に生きる。
楓という名の美しい気品の高いその姫との家族の生きざま。
兄弟の確執も含めて、ストーリーの展開に飲み込まれていく。
そしてそれぞれの場面の情景描写など文章が美しい。
どこにこんな文才があったのだろう。

クーデターの双方のどちらに味方するか、そしてその中を泳ぎ抜く策士たる武将たち。

いずれにしろその展開は、思わず夢中に最後まで読み切ってしまう作品だ。
我が家の話題は現在、宝塚で上演する時の配役にまで及んでいる。

その一週間後に、宝塚の演出家の先生と食事する機会があった。
早速にこの本の贈呈をおこなった。
「いつか必ず」が、私と妻の合い言葉である。

シゲニー・イートン

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