2006年10月01日

超現代的勝手連初体験~『蟻の兵隊を観る会』に参加して

●小さな映画館での単館上映が 連日満員、全国へと拡がって
 今年の夏、東京・渋谷の小さな映画館で、連日、ある映画に長い行列ができました。
 単館上映にもかかわらず7月22日の封切りから4週目の途中で観客動員1万人突破、という快挙を成し遂げ、大阪・名古屋でも連日満員。上映は、札幌・京都・新潟・那覇など全国各都市へと拡がっています。

 その映画『蟻の兵隊』は、ポツダム宣言受諾後も、軍命により中国国民党系の軍に加わり、4年間にわたって共産党軍と闘い続けた元日本兵たちのドキュメンタリーです。彼らは日本軍の司令官によって国民党軍に売られたのですが、昭和30年近くになってやっと日本に戻って来ると、勝手に国民党軍に加わったものとして逃亡兵の扱いを受けます。………終戦記念日が近づくにつれて、多くのマスメディアで取り上げていましたので、目に、あるいは耳にされた方も多いと思います。

●インターネットで産声をあげ、“思いを共有すること”で発展
 この映画は、一般の寄付を募って自主製作されたものです。したがって、監督の池谷薫氏も当初は、これだけ多くの観客を集めるとは思いもしませんでした。しかし、映画の存在を知り感動したフリーライターのIさんが、インターネット上でまず応援の声をあげ、それに呼応してお互い見ず知らずの人々が集まり、『蟻の兵隊を観る会』が立ち上がりました。私の信頼する30年来の友人もその一人で、彼女に誘われて私も仲間に加わり、微力ながらお手伝いしました。 今回、この上映運動に参加してみて、こうしたインターネットを通じた人々の集まりが、既存の組織では為し得ない運動へと発展していく可能性を実感しました。このように『観る会』は、極めて現代的なコミュニケーションツールによって産声をあげ、当初はお互い顔も知らない人同士ではありましたが、“思いを共有すること”で発展していきました。映画の主人公の奥村さんの“山西省残留問題がベールに包まれたままでは死んでも死にきれない”という思いを、メンバーのひとりひとりが何とか実現させてあげたい!そういう気持ちで頑張ったこともビッグヒットの一因ではないかと思っています。

● 何故この映画に惹かれたのか 画面を通して感じられる思い 
 チケットを購入していただいた多くの皆さま。本当に有り難うございました。心よりお礼を申し上げます。
 また、まだご覧になっていらっしゃらない皆さま。もし、今後上映される機会がありましたら、是非足をお運び下さい。奥村さんの思いが、はたまた監督の思いが、画面を通して感じられることと思います。そして、『観る会』のメンバーたちが何故この映画に惹かれていったかがお分かりいただけるのではないかと思います。

Information
【映画『蟻の兵隊』】

日本軍山西省残留問題の真相を解明しようと孤軍奮闘する元残留兵、奥村和一の姿を追ったドキュメンタリー

池谷薫監督が奥村さんに出会ったのは2004年4月。日本軍山西省残留問題を初めて聞き、元残留兵が国を相手に裁判を続けていることに衝撃を受ける。
同年7月、裁判を傍聴した池谷監督は、最年少者80歳という原告団が孤立無援の戦いを続けていることを痛感、映画の撮影を決意する。製作資金を全国の有志から寄せられた支援カンパで補いながら取材を続行し、2年に及ぶ撮影を経て、2005年11月『蟻の兵隊』が完成。公開の見込みが立たない2006年2月、試写を観て感動した人々が自発的に集まり「蟻の兵隊を観る会」を結成。一人でも多くの人に観てもらうためにボランティアで映画の普及活動を行っている。2006年香港国際映画祭人道に関する優秀映画賞受賞

 

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